出産体験記〜赤ちゃんってすごい!〜
2004.06.17
深い深い淵のように
覗き込む者すべてを
吸い込んでしまいそうな
つぶらな瞳。
大事な宝物を隠しているかのように
ぎゅっと握り締めた
小さな手。
これからどんな道を歩むであろうか
まだ土踏まずもない
細い足。
何もかもが小さくて
何もかもが新しくて
否応なしに幸せを振りまく
小さな命。
生まれてくれて
本当にありがとう。
ママはずっとあなたに
会いたかったんだよ!
いきなり詩で始まり、「???」と思った方もいるかもしれません。
9月に入ってから産休を頂いておりましたが、9月27日に予定日よりも2週間も早い出産を迎えてしまいました。
我が子と対面した時の感動を少しでも皆さまに伝えたい!と、産後病室で書き留めた詩をご披露した次第です…(あ〜恥しい)
「感動」なんて軽々しく言ってしまいました。
そもそも長男に続く2人目の出産ということもあり、妊娠中は「2回目だからね〜痛みも感動も大したことないわよ(笑)」と友人たちに豪語していた私なのに。
あ〜それなのに!
なぜあんなに泣けてしまったのか!!
それは、赤ちゃんは「産む」のではなく、「生まれる」ものだということを、今回の出産で思い知らされたからです。
担当の助産院の先生は、「赤ちゃんはね、自分で考えて一番いい時期に、一番いい方法で生まれてくるのよ。赤ちゃんって本当にすごいのよ〜」と、耳にタコができるくらい会う度におっしゃっていました。
そう言われても「へぇ〜」としか反応できなかった私でしたが、そんな能天気な母とは違い、私の赤ちゃんも自分でちゃんと考えることができるお利巧さんでした。
「へその緒」って皆さま知っていますよね?
そう。あの桐の箱にしまってある、干からびたミミズのようなものです。
このへその緒を通じて、赤ちゃんはお母さんから栄養をもらい育ちます。
そんなことは常識範囲かも?
でも、生のへその緒を見たことがある方となると、そう多くはないと思います。
へその緒はただの紐状のものではなく、ばねのようなねじれた構造をしています。
なぜならば、産道を回旋しながら生まれてくる赤ちゃんが、スムーズに動けるよう伸び縮みできなければならないからです。
へその緒があんまり長すぎると赤ちゃんの首に絡まったりしてしまうし、短くてももちろんだめ。絶妙な長さが必要なのです。
私の赤ちゃんはへその緒が短かったため、途中で回れなくなってしまい、出てくるのに時間がかかっていました。
総合病院で同じような状況になったら、きっと吸引分娩(トイレのカッポンみたいなもので引っ張り出す方法)になっていたと思います。実際一人目のときは(状況は多少違いますが)吸引分娩だったため、無理やり「生ませられた」という感がありました。
さて、今回の助産院ではというと…
「赤ちゃんの生まれてくる力を、もう少し見守りましょう」という先生の言葉に、赤ちゃんも励まされたかのように、1回転するところを急遽方向転換をし、半分逆回りすることによって、無事生まれることができました。
出産後、「誰の指示でもなく、赤ちゃんが自分で考えた結果、逆回りで生まれてきたのね」という先生の言葉を聞き、思わず涙がこぼれてしまいました。
一人目のときの「産んだ」という達成感からの涙ではなく、純粋に赤ちゃんの持つ大きな力に対しての畏敬の涙でした。
地球が誕生した時の海と同じ成分だという羊水の中で、魚類から両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、人間へと進化の過程をもう一度辿って生まれてくる赤ちゃん。
そこには目には見えない大きな大きな意志が関わっているように感じます。
私は無宗教ですが、生命の誕生は偶然ではなく、いわゆる神様のような人間には計り知れない大きな力が作用しているのではないか、という気持ちにさえなります。
くしくも9月27日は中秋の名月の前夜。ひと月の出産件数が10件あるかないかの小さな助産院なのに、その日と翌日の満月の夜は出産ラッシュで、5部屋しかない助産院は生まれた赤ちゃんで満員でした。
満月の日は出産が多いと聞いたことはありましたが、やはり人間なんて自然の力に知らず知らず支配されているのではないかという気になりました。
傍らで眠る赤ちゃんを見ていると、何だかとっても不思議な気持ちになります。
つい先週までお腹にいたのに、今はもう立派な一人の人間としてあくびをしたり、伸びをしたり、自分の存在をアピールしているのですから。
汚れてしまった大人の代表、みたいなうちの旦那も「この人も昔はあんな可愛い赤ちゃんだったんだ」と思うと、なぜかムカっ腹も治まります。
そんな不思議な力も赤ちゃんにはあるみたいです。
早く大きくなって欲しいという気持ちと、このまま赤ちゃんでいて欲しいという相反する勝手な願いを持ちつつ、これからの育児(育自)を楽しんでいこうと思います。
最後に。
これから生まれてくる世界中の赤ちゃんに、幸せで穏やかな毎日が訪れますように…
(鈴木優子)