生命の誕生
2004.06.17
5年前のその日、私はその病院で約2日間かけて第1子を出産した。
初産ということもあり、夫立会い、両親も病院にいてくれた。
しかし今回は『ひとりぼっち』のお産となった。
深夜に夫に連れられて入院。仕事を終えてくたびれ果てた夫の目は半ば閉じていた。
先生からの説明後、いよいよお産に向けての準備が始まった。
助産師さんは「ご主人は帰れないわねぇ」と一言。
が、私自身今回は一人でがんばると覚悟を決めていたため、夫に長男のことを頼み、一刻も早く帰るよう促し、強くHug、固い握手をして別れた。
午前6時、7時、8時と1時間おきに誘発剤を飲み、午前10時に訪れた両親には、その日の長男の誕生会お願いをし、私はいよいよ強くなる陣痛に耐えていた。
12時を過ぎた頃、隣のLDR(分娩室)からHappyBirthdayの大合唱が聞こえてきた。私のところにいた看護婦さんも「ちょっとお祝いに行ってくるね」と言って部屋を後にした。
それから約2時間半後、とうとう私の番が来た。
一人目のときは本当に必死で、血圧が上がったり、投薬後下がりすぎたり、そして出血量が通常の3倍の約1500mlと多かったため、産後すぐに自力で呼吸ができなかったのを覚えている。
だが、今回は違った。
私がきちんと赤ちゃんの誕生の瞬間を目にしなければ、他には誰もいない。
一生懸命痛みに耐え、頑張って、この世に誕生してきた我が子の決定的瞬間を私は見逃さなかった。
胎盤も見せてもらった。きちんと目に焼きついている。
器管に詰まった羊水を取り除いた後、我が子は大きな声で泣いた、泣いた、泣いた。
身体をきれいにしてもらっている最中には、おしっこをした。
その後、私の右の乳を吸い、そして私の心音を聞かせるためにわが子は左胸に乗せられた。
我が子と対面した瞬間、「またまた私をお母さんにしてくれてありがとう」という気持ちで一杯になった。
本当に本当に嬉しかった。
私たち親子の処置が手際よく進められ、それから恒例の『ご出産おめでとう』の垂れ幕が用意され、鈴やタンバリンを手にした先生、助産師さん、婦長さん、看護師さんら7〜8人はいただろうLDRにHappyBirthdayの大合唱、その後これまた恒例のデジカメでの撮影会が始まった。
その夜遅くに、仕事を終えた夫が、我が子の顔を見に訪れた。
夫は私を見た瞬間、私が歩いているのを見てびっくりしていた。
一人目のときは、貧血・動悸・めまいで、とにかく大変だった印象が強烈だったためであろう。
ちょうど第1子を取り上げてくれた助産師さんが当直で、親子の写真を撮ってくれた。
夫は「ようやった。よう一人で頑張った。ありがとう」の言葉を残し、帰って行った。
この言葉が私にはすごくすごく嬉しかった。
『2人目安産』という言葉を耳にしたことがあるが、お産は何度経験しても本当に大変だと思う。
その大変さを乗り越えた分、母親は強くなるのだと実感している。
『赤ちゃんは幸せを運んできてくれる』と聞いたことがあるが、その通り。
我が家には只今2人目の幸せ運び人がいる。
1人目の運び人同様、夫とともに大事に育てていきたい。
子供を授けてくれた夫、私を母親にしてくれたかわいい子供達、妊娠中そして今もなおサポートし続けてくれる職場の仲間達、仕事関係の方々、友人、そして両親、たくさんの人々に心より感謝している。
「ありがとう!」
(安倍英子)